現場に出なくなって三年くらいになるが、朝昼晩と三食喰ってぶらぶらいているので、血圧は下がらず、血糖値も高値安定である。おまけに体力の衰えを感じたので、少し足腰を鍛えようと、団地の周辺を歩く事にして、一ヶ月が過ぎた。・・・晴耕雨読ではないが、大雨の日は除いて、ゆっくりと団地の道路を半周しているのだが、最近右ひざの周りに違和感を感じるようになった。・・・資材担当の社員に、「膝の周りに違和感を感じるのだが、歩き過ぎかなあ!」、と訊ねると、鷹揚に、「会長、どうぞこちらへ!」、とパソコンの前に座らされた。そして、パソコンで団地の地図を出すと、「会長の今歩いているコースは、これですよね!」、と指を指された。「そうだけど!?」、といぶかしげに彼の顔を覗き込むと、地図の横に物指しを出して、その距離に充てていく、「はい、会長の歩いている距離は、1340メートルになります!」、と答えた。「坂道が多いから、もっとあるようにおもえるけどなあ!」、と言うと、「坂道は登りがあって、下りがあるので、行って来いです、距離は正確ですから、会長が理想としている一万歩歩くためには、団地を一周して、もう半分歩かなくてはなりません、がんばってください!」、と笑いながら答えた。昔は現場を駆け巡り、暇を見つけては、ゴルフざんまいだったから、「健康を目的に歩く」、なんてことは考えても見なかったが、いざ歩いてみると、以外にに歩けないものである。これからは、少しずつ距離を伸ばして行こうと考えている。・・・・駆け出しの頃は貧乏で、刺身の切り落としとか、もやしのこま切れ炒めとか、安くて栄養バランスだけを考えた食事が、食卓に並んだが、・・・歳を取って、お金に不自由しなくなってからも、同じである。食べたいものがある、と言っても女房は、聞いてくれない。・・・毎日の食事の献立は、スーパーの、2割引・三割引の食品によって決まるのである。テレビで、ふかひれの姿煮とか、ブランド牛のステーキとか、高級な食事の番組をやっているが、「あんなものを、食べてみたいな!?」、と何気なく横目で見ながら言うと、「うるさいねえ、それでなくても、血圧や血糖値が高いといわれているのに、あんなもの食べたら死んじまうよ!」、と言う、「2割引・三割引のものを食べていたら、血糖値が下がるわけでもないだろう!?」、と反論すると、「激安食品を買うのが、私の趣味なんだよ、つべこべ言わずに、黙って出されたものを食べていればいいんだよ!」、と怒鳴られてしまった。・・・しかし、買いすぎて、消費期限切れの菓子などが余ると、食堂や居間のテレビの前とか、手の届くところにいつも並んでいる。横着して手を伸ばすと、術中にはまって、消費期限切れを食べさせられてしまう。・・・そのくせ、大切なものは何処を探しても見当たらない。女房は夫の行動範囲は熟知していて、隠す処は心得ているのである。・・・・
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